AIに前提を共有するコツ|在庫3,700種で学んだ話
こんなAIへの頼み方、していませんか
- 「AIに頼んでも欲しいコードが出てこない」と感じたことはありませんか?
- 「毎回同じ前提説明を繰り返している」と疲れたことはありませんか?
- 「AIの返事が的外れで何度もやり直し」になっていませんか?
自分も同じでした。物流現場で資材在庫を管理するGASを作ったとき、最初にAIへ投げたのは「在庫管理のGAS書いて」の一言でした。返ってきたのは、どこかのチュートリアルで見たような汎用コード。自分の現場では1行も使えませんでした。
結論から言うと、AIが的外れな返事をするのはAIが悪いのではなく、前提の渡し方が足りていないだけです。この記事では、在庫3,700種のGAS開発で失敗しながら身についた「前提共有の5つの型」とコピペで使えるプロンプトテンプレを公開します。
読み終えるころには、毎回の説明が1分で終わり、AIの返事が一気に実務レベルになる感覚がつかめるはずです。
結論:AIへの前提共有は「5つの型」で決まります
結論を先に書きます。AIに頼むときは、やりたいことの前に以下の5つを必ず渡してください。
- 対象の規模(例:在庫3,700種/1日100件の申請/月1回の棚卸し)
- 運用者のスキルレベル(エンジニア/非エンジニア/Excelは使える程度など)
- 既存環境・制約(Google Workspace社内版/承認フローあり/外部API不可など)
- 変更頻度・更新サイクル(毎日更新/週次/半年に1回の見直しなど)
- ゴールの温度感(完璧に作り込みたい/まず動けばOK/社内デモ用)
この5つを先に渡すだけで、AIの返事は驚くほど変わります。逆に言えば、この5つがないと、AIは「一般的な正解」を返すしかなく、現場では使えないコードが返ってきます。
なぜこの5つなのか、そしてどう渡せばいいのかを、自分の失敗例と合わせて説明していきます。
なぜ前提を共有できないとAIは当て外れな返事をするのか
AIは万能ではありません。渡された情報の範囲で、最もありそうな答えを返す仕組みです。つまり、こちらが「在庫管理のGAS書いて」としか言わなければ、AIは世の中の平均的な「在庫管理GAS」を返します。
ところが現場には「平均」はありません。自分の物流現場で言えば、
- アイテム数は3,700種で、一般的な中小企業より1桁多い
- 運用者は非エンジニアの現場スタッフで、GASのデバッグはできない
- 更新は毎日80件前後、誰かが必ず触る
- 完璧なシステムよりも「壊れにくい・戻せる」ことを優先
この条件のどれか一つが変わるだけで、必要なコードの設計は変わります。AIにこれを伝えなければ、「平均的な在庫管理GAS」が返ってきて当然です。
前提共有とは、AIに「あなたの現場の地図」を渡す作業です。地図がなければ、AIはどこに向かって走ればいいかわかりません。
正直に言うと、AIが全然違うコードを返してきた、というほど極端な失敗はありませんでした。10往復しても噛み合わない、というような事故もなかったです。ただ、返ってきたコードがいつも「自分の現場では使えない」ものだった——それがずっと違和感として残っていました。
自分なりに工夫したのは、最初のプロンプト設計をチャット型のAIで壁打ちしてから、コードを書くAIに渡すという流れです。現場の地図(前提)をチャット型AIと一緒に作り込んでから渡すことで、返ってくるコードの精度を少しずつ上げてきた、というのが実感です。
在庫3,700種の現場で学んだ前提共有テンプレ
自分がGASを書き始めたとき、最初の2週間はAIとの往復にほとんどの時間を使っていました。返ってきたコードを試す→動かない→「うちの環境ではこうで」と説明し直す、の繰り返しです。
あるとき気づいたのは、自分が毎回同じ前提を別の言い方で説明していることでした。ならば最初にまとめて渡せばいいのでは、と思って作ったのが前述の5つの型です。
例えば、3,700種の資材をQRコードで管理するGASを依頼したときは、こう書きました。
- 対象:資材3,700種。QRコードは印刷済みで、1枚に品番と保管場所が埋め込まれている
- 私のスキル:非エンジニア。GASは触ったことがない。Web系のHTML・CSS・JavaScriptが写経レベル
- 環境:Google Workspace(社内版)。承認ワークフローあり。外部APIは禁止
- 更新頻度:毎日80件前後、複数人が同時に触る
- ゴール:初心者・非エンジニアが触れるシンプルな仕組みにしたい。まず動けばOK
これを渡したあとは、一発で完成したわけではありません。既存の現場シートをまずAIに読み込ませて、そこから「GASを組み込む用のスプレッドシートにバージョンアップしていく」形で、少しずつ現場で使える形に近づけていきました。前提を共有したからといって、最初から完成品が降ってくるわけではない——ただ、やり直しの方向性が一気に定まるのが、前提共有の本当のメリットだと感じています。
ポイントは、AIが「省略してはいけない条件」だけを渡すことです。逆に、たとえば社内の組織図や、社員の年齢構成まで渡す必要はありません。書きすぎるとAIがどこを重要視すべきかわからなくなります。
関連して、QRコード連携そのものの話は記事2(QR在庫GAS)、在庫管理本体の設計思想は記事5(在庫管理)で詳しく書いています。
コピペで使える前提共有プロンプト公開
自分がいまも使っているテンプレをそのまま公開します。チャット欄の一番上にこのブロックを貼り付けて、【やりたいこと】の部分だけ書き換えて使ってください。
以下の前提でコードを書いてください。
【対象】[数量・品目]
【私のスキル】[エンジニア/非エンジニア]
【環境】[ツール名・バージョン]
【更新頻度】[毎日/週次等]
【ゴール】[完璧/動けばOK・理由]
【やりたいこと】
...
使うときのコツは3つあります。
- 数字で書けるところは必ず数字にする(「多い」ではなく「3,700種」)
- スキルは正直に書く(見栄を張ると、返ってきたコードが理解できずに詰みます)
- ゴールの温度感は必ず書く(「完璧」と「動けばOK」ではAIの設計が全く違います)
特に3つ目は非エンジニアこそ書いてほしい項目です。「動けばOK」と伝えると、AIは複雑な例外処理を省いてくれます。読めるコードが返ってくるので、改造もしやすくなります。
動詞を1つに絞るコツは記事8(AI最速プロンプト)、走り書きをAIにリライトしてもらう型は記事11(走り書きをAIにリライト)で紹介しています。前提共有とセットで使うと精度がさらに上がります。
大前提として、自分はAIとのやり取りは1回で完成するものではないと思っています。何回もやり直して修正をかけながら、少しずつ理想の形に近づけていく作業です。非エンジニアの現場で作るものでは、1発で返ってくることはまずありません。
だからこそ大事なのは、自分のやりたい形を言語化すること。完璧な文章でなくていいのですが、イメージを自分の中ではっきり持ってから言葉にすると、AIの返事も安定します。根気よく——というほど力まなくていいのですが、1つずつ改善を重ねていくのが現実的な進め方だと思います。
前提を共有できなかった失敗例と、共有したら変わった瞬間
正直に失敗も書いておきます。
失敗例:前提なしで投げた最初の1週間
「在庫管理のGAS書いて」とだけ頼んで返ってきたのは、新規スプレッドシートに在庫名と数量を書き込むだけの30行程度のコードでした。自分の現場にはすでに稼働中のシートがあり、この新規コードはそのままでは使えませんでした。「うちのシートはこうで」と説明し直しても、返ってくるコードはいつも一般論の域を出ず、現場に着地しませんでした。
変わった瞬間:5つの型を渡した直後
同じ依頼を、前提5つを先頭に付けて投げ直したところ、1往復目で「既存シートの構造を教えてください。それに合わせて追記形式で書きます」と返ってきました。AIが「渡されていない情報」を自分から聞き返してきたのは、このときが初めてでした。
つまり、前提を渡すとAIが「足りない情報」を自覚するようになります。これが実務で使えるコードへの最短ルートでした。
注意点:前提の渡しすぎも逆効果
もちろん万能ではありません。あるとき、社内ルールや担当者の事情まで書き込みすぎて、AIが「ご指定の条件では実装できません」と返してきたことがありました。条件を厳しくしすぎると、AIは動けなくなります。
ここは試行錯誤のポイントで、最初は5つの型だけ、そこから必要に応じて1項目ずつ足していくのが現実的です。
条件を書きすぎてAIが止まってしまった経験は、実は何度かあります。「なぜ動かないんだろう」とこちらも一瞬ひるむのですが、原因は情報過多でした。特に在庫3,700種のようなデータをそのまま読ませようとすると、AIが処理しきれずに重くなってしまうんです。
そこで自分がとった対応は、読み込ませるファイルを分割すること。一度に全部渡そうとせず、少しずつ読んでもらうと、ちゃんと動いてくれました。前提共有は「量より渡し方」だと学んだ瞬間でした。
まとめ:前提共有は1分で仕込める
長く書きましたが、やることはシンプルです。
- AIに頼む前に、対象規模・スキル・環境・更新頻度・ゴールの5つを書く
- 数字で書けるところは必ず数字にする
- 最初は5つだけ、足りなければ1項目ずつ足す
チャット欄の一番上にテンプレを貼り付けるだけなので、仕込みは1分で終わります。この1分で、その後の30分の往復がなくなります。
AIは万能ではありません。ただ、地図を渡せば現場まで一緒に走ってくれます。非エンジニアの自分でも、3,700種の在庫を動かすGASが書けたのは、この前提共有の型に気づいたあとでした。
明日の依頼から、ぜひ5つの型を試してみてください。
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